4 冷たい台詞 【4-4】



「あ、そうでした、ファンレターを……」


渡されたファンレター、寝ている平野さんの横にあるテーブルの上に置く。

確かに平野さんに手渡したのだから、これで任務完了。

私は自分の椅子に戻る。

平野さんは左手で封筒を止めてあるシールを取ると、寝転がりながら中の便せんを見る。

しかし、一瞬だけですぐにテーブルに置いた。

中身、読まないのだろうか。


「ファンなんて、3日もすれば気が変わるよ」

「エ……」

「女心なんて、そんなものだ」


まぁ、『女心と秋の空』という、変わりやすいものを表した言葉もあるけれど。



『今でも君を……』



思い出してしまった。

我が家に入れられた、あの誕生日カード。

今でもというのは、継続という意味で。


「気が変わる人ばかりではないと思いますよ。
離れても、ずっとその人を好きで、思い続ける人もいるでしょうし……」


あの誕生日カードを意識した、『らしきこと』を言いながら、平野さんを見る。

どうだろう、反応している?

自分がしたことを思い出して、どこか黄昏れているような表情が見られたら……



たら……



寝転がっていた平野さんが、自分の右手を畳について、

その手の上に頭を乗せてこっちを見た。


「お前さぁ、年齢、30だとか言ったよな」

「……もうじきです」


正確にはまだ29。

なんとなくそこを主張する。


「世間一般的に考えると、ある程度落ち着いている年齢だろう。
恋愛に夢見たいなこと言ってると、変なヤツに騙されるぞ」



は?



「あの……」

「シッ!」


何やら携帯をいじりだした平野さんに、静かにしろという意味だろうか、

『シッ』って、犬じゃないですし。

それでも言い返すのはめんどうなので、これは修行だ、我慢だと自分に言い聞かせ、

ちょうど見本に残された『HEROES』という雑誌をめくることにした。



『HEROES』



色々なスポーツを、順番に特集する雑誌。

競技によって、世界大会など大きな大会を行う時期は違っているため、

毎月ではなく隔月のようだけれど。

その中で、人気を誇っている特集ページ。

それが選手達の競技とは違った顔を追いかけるというもの。

この号は、サッカー選手と、バスケの選手のようだった。

ユニフォームではない姿、モデルさんのような写真。

そうか、平野さん、今日はこういった写真を撮ったということ。

何やら携帯が揺れたので、相手を確認する。



『みち君』



朋花の彼、みち君こと『和田道人(みちひと)』。

こういう連絡が入るときと言うのは、ほとんどが朋花とのケンカだ。

今、ここで出るわけにはいかないので、静かに楽屋を出て廊下に向かう。

一番隅っこまで行き、通話ボタンを押した。


「もしもし……」

『あ……結花さん、すみません』

「何? どうしたの、また朋花とケンカ?」

『すごいな、どうしてわかります?』



簡単です、いつもそうだからです。



『いや、でも、今度は本当にやりました。あいつ電話に出ないから』

「電話に?」

『はい。完全に無視されています』

「それなら、家に行けば?」


みち君と朋花は、親公認の仲。

家を訪ねたら、うちの両親がちゃんと受け入れるはず。


『嫌ですよ、俺悪くないですし』

「だったら悩むことなし。突っぱねていたらいいでしょう」


いつも大変だと口では言うけれど、いつの間にか仲直りしていることの方が多い。

ということは、今回も放っておけば、いつものように収まるはず。


「あ……みち君、今悪いけど忙しいの、ごめん、切るから。また後でね」

『あ……ちょ……』


彼なりに色々とあるのだろうが、今、真剣に聞く時間はない。

明らかに、平野さんを取材すると思える人達が、こちらに向かって歩いてきた。


「平野さん、いらっしゃったみたいです」


そう声をかけると、わかったという意味だろう、右手があがった。


【4-5】



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