19 隠された秘密① 【19-1】

19 隠された秘密①



『全日本にもう一度……』



「まぁ、『バーズ』の選手は、正直、トップクラスとは言えないからさ、
評価されるのかどうか、そこは難しいだろうけれど、でも、目標は大きく持たないとね」

「はい」

「平野が、『お前のトスでスパイクを打って、選手を終えたい』って、言ったらしい。
嬉しかったみたいだよ」

「そうですか……」


市川君と平野さん。

平野さんは、市川君の実力を本当に評価している。

だから、最後の場所を『バーズ』にしたのかもしれない。

『その場所』にたどり着いている人達にしかわからない、一体感。


「あ、石橋さん、少し早いけど、何か食べていく?」


ご主人の声。


「すみません……今日はお弁当を持ってきていて」


そうだった、ここに来るとわかっていたのだから……

私以外の広報3人が、どちらかというと外周りを引き受けてくれることが多く、

自然と電話やPCの担当が増えたので、つい、お弁当を持ってきてしまうのだけれど。


「すみません」


気が利かないな、私。


「謝ることなんてないわよ、お弁当か……そうか、いいじゃない、女子力高くて」

「いや、女子力というか、あまりものですけど」


冷凍食品もあるし、サラダを適当に持ってきて、ごまかすことも多いし。


「お金をかけずにパパッと作る。それ大事だよ」


澄枝さんは『それならまた練習でね』と声をかけてくれる。


「はい、また……」


私は『中華二番』を出ると、自転車に戻る。

少し雲が増えて、暗さが増した気がするので、急いで事務所に戻ることにした。





そして11月の終わり、『バーズ』にとって、3試合目の相手は、

昨年2部リーグの覇者、『ストーンウルフ』。

チャレンジマッチで1部リーグの最下位チームと対戦したが、惜しくも負けた。

春の練習試合でも、『バーズ』は負けている相手。


「全日本の?」

「はい。奥平監督が来ています」


現在、全日本を率いている奥平監督。

現役時代はエースとして、国際大会出場記録も持っている人だ。

この間、平野さんを取材に来た山波さんよりも、さらに世代が1つ上の人になる。


「今日は『ストーンウルフ』ですからね」


本田さんは、奥平監督の目的は、相手チームではないかと言っていた。

確かに、向こうの選手は、以前全日本にいた人も数名いる。

でも、私はそうではない気がして、自然と市川君を見てしまう。

初戦を逆転で勝てたのも、2試合目をフルセットまで持ち込めたのも、

市川君の力が大きい。

来るとは思わなかった人が、会場に姿を見せたことで、マスコミの動きは激しくなる。

数名の記者が、『誰を目的に……』と奥平監督に質問をしていた。



『平野から連絡がありまして……』



翌日の、スポーツ新聞。

野球やサッカーの記事に比べたら、小さくて見逃しそうなところだけれど、

奥平監督が2部の試合に顔を出したことが書かれていた。

奥平監督は、結局『どういう目的だったのか』という部分を明らかにしていないが、

詰め寄ってきた記者に、『平野……』と平野さんの名前を出した。


「1部の選手だけが優秀だとは限らない……か。確かにそうだし……。
「あ、こっちにもありますよ。チームの成績に、
選手の実力が比例しているわけではないので……だって」


現在の全日本は、半分近くが『ブルーサンダー』の選手だ。

確かに、セッターやアタッカーの呼吸を考えたら、いつも一緒に練習をしている方が、

合わせやすいことはあるだろう。


「いいのかな、こんなこと平野さんが言ったって出てしまって」


小松さんは首を傾げる。


「どういうことですか」


新聞を読んでいた本田さんの顔が上がる。


「だって、自分がいた『ブルーサンダー』に対して、皮肉のようなものになるでしょう。
1部リーグの選手だけがいいわけではないだなんて。
今の選手達、『ブルーサンダー』が多いですから」


小松さんは、『次の取材で何か言われないといいけど……』とため息をつく。


「小松さん、そういう下向きな意見ばかり言わないでもらえます?
平野さんらしくていいでしょう、言いたいことはきちんと言う。
でも、自分にもしっかりと課題を課す……ねぇ、石橋さん」

「エ……あ、うん」


本田さんの言葉に、小松さんは立ち上がり、マグカップを流しに置く。


「はい、はい、男は気が小さいですよ」


そういうと、本社に行きますといいながら、事務所を出て行った。





次の日、外は朝から憂鬱な雨だった。

3試合を行って、1勝2敗の『バーズ』だが。

負けた試合はどちらもフルセットまでもつれたため、順位は今3位になっている。

ここから勝ちを重ねられたら、

入れ替え戦になる『チャレンジマッチ』を目指せるかもしれない。

本田さんと小松さんは、協会の仕事のため直行していて、

松尾さんは3時過ぎに来ると連絡が入った。


「いただきます」


お弁当を広げて、食べようとした瞬間、扉が開く。


「あ……」


入ってきたのは、平野さんだった。


【19-2】



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