22 最後の日 【22-1】

22 最後の日



「はい、練習試合が決定しました」


リーグ戦が終わり、入れ替え戦が終わった後、

私が参加する予定の『ラッコーズ』の練習試合が、組まれることとなった。

もちろん、球拾いでいいと何度も言ったのだが、『ダメ!』と澄枝さんに怒られて、

とにかくコートに1度は入ることを約束させられる。


「ほら、石橋さん、次サーブ」

「はい」


練習では何度もしているけれど、試合で出来るだろうか。

とにかくしっかりとボールを見て、足を曲げて……


「行ったよ!」


なんとか向こうに入った。

すぐにポジションに戻るが、アタックされたボールを取ることが出来ない。


「どんまい、どんまい」

「次……」

「すみません」


次は絶対に手に当てよう。

そう、当てたら何かが起こるかもしれない。

何もしないでコートに落としたら、それで終わりだから。


「よし、こい!」


逃げてばかりじゃダメ。

『バレーボール』をもっと好きになりたい。

サーブが私のところに飛んでくる。両目をしっかりと開けて、

素直に手に当てて……



『送り出すように……』



そう、送り出すように……


「ナイスレシーブ!」


あがったボールはセッターに戻り、チームのアタッカーが決めてくれる。


「いいよ、石橋さん、大丈夫、大丈夫」

「はい」


一つずつ、小さな一歩。

でも、それがまた次につながる。


「次、行くよ」


私はしっかり構えて、次のボールに備える。

レギュラーチームはさすがに単純ミスが少なく、

控えの私たちの方がボールを落とすことは多いけれど、

それでもまた次だと、みんなで笑顔になれた。



「よし、次、こい!」


練習時間が残り30分くらいになった時、サーブを打とうとした澄枝さんが、

驚いた顔をして手を下ろしてしまう。

コート全体がざわざわした雰囲気になり、みんなの視線が、私の後ろの方に向かった。

私も遅れて、振り返る。




どうしてここに……




体育館の用具室入り口に立っていたのは、平野さん。

来るはずのない人が目の前に立っているため、

あまりの驚きに、『ラッコーズ』全体の動きが止まる。


「あ……平野選手」


小林さんが絞り出した言葉に、みんなが一斉に動き出す。

平野さんのそばに走る人、驚き隣の選手と笑い合う人、

私のように、ただ立ちすくむだけの人。


「すみません、練習中に」

「いえ……いえ、そんな……」


小林さんと望月さんは、『サインをいただけませんか』と平野さんに話しかける。


「あ、ほら、みんな……」


そういう澄枝さんもボールを置き、コートを離れたため、

『ラッコーズ』を囲む、平野さんのサイン会が、急遽行われた。

あまりにも急だったので、色紙など用意している人はなく、タオルだったり、

バッグだったり、色紙代わりは色々だが、それでも携帯で記念写真も撮ったり、

慌ただしく時間が進む。

どうしてここに、平野さんが来るのか理解出来ていない私だけが、

コートに残ったままで。


「すみません、少しいいですか」


ファンイベントのような状態に、平野さんがストップをかける。


「あ、ごめんなさい」


澄枝さんたちはその輪に、一人入らない私の方を見た。

スーツ姿の平野さんが、上着を脱いでボールケースの上に置く。

ワイシャツの袖のボタンを外し、指につけていたテーピングを外し、

腕まくりをしながらこっちに来た。


「貸しを作ったまま、チームを離れることはしたくないので」


ボールを持ったまま立っていた私から、平野さんはボールを奪う。


「まぁ、もうどうでもいいかもしれないけど……」


それを手で下に打ち付けながら、私がいつも壁当てをしていた場所に向かった。





もしかしたら……





『雲に乗るトス』を、見せてくれるつもりだろうか。


「ほら、先にやってみろ」


平野さんはボールを私に戻してくる。


「10回、出来るようになったんだろ。まずはそこを確認しないと」


約束の壁当て。

そう、私は出来るようになった。

腕だけで跳ね返すように打っていたことを見抜かれて、

腰をおとして運ぶようにすることを教えてもらった日から、

毎回、練習ごとに努力して……



出来るようになった。


【22-2】



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