4 重いは想いか金額か

4 重いは想いか金額か


康哉のアパートへ行った邦宏が戻り、事務所には3人の男が顔を揃えた。

飛び入り参加になった比菜も、玄関の隅に立ち、男達の話し合いを聞く。


「叩いても、叩いても、全然ダメだった。完全に逃げられたな。
あぁ、大久保工務店の回収を康哉に任せたのがまずかった」

「でもさぁ、あの社長は康哉の縁で仕事を寄こしたんだ。
あいつが前に出て行くのは仕方ないよ。でもな……俺、まだ、康哉が持ち逃げなんて、
信じられないんだけど。きっと、何か……」

「考えろよ靖史、それが現実なんだ」


康哉のアパートはシャッターが閉まった状態で、何度扉を叩いても、

誰も出てくることはなかった。

康哉が働いているここではないバイト先に電話を入れ、何か聞いていないかと尋ねたが、

向こうの店長も驚いた状態で、何も知らないと言われ受話器を置く。


「警察に行こう。これは立派な犯罪だ」


大和はそう言うとFAXで届いた紙を手に持ち、その場に立ち上がった。

廊下の隅から中の様子を伺っていた比菜が、慌てて大和を止める。



「ちょっと待って下さい。犯罪って、あなたたち康哉と仲間なんでしょ。
何か事情があるんじゃないかとか、少し待とうとかそういう気持ちはないの? 
いきなり警察だの、犯罪だのって、そんなの……」

「仲間? 冗談じゃないぞ。あいつはこの30万がどういう金なのかわかっていて
持って逃げたんだ。しかも、俺たちとの携帯はさっさと契約を切っているのに、
そっちとはつながるじゃないか」

「エ……君、康哉と携帯つながるの?」


邦宏と靖史の視線に、比菜は思わず携帯を握りしめ、手を後ろへ回す。

視線を何度も動かしながら、盗られないようにと身構えた。


「邦宏、お前ハヤトの散歩だろう。いいよ、俺が警察へ行ってくる」

「待ってって、言ってるじゃないですか」

「何をどう待つんだ」

「何って……」


大和の切り返しに、勢いで大きな声を出した比菜も、そのまま口を閉じる。

自分を見ている目の冷たさに、比菜は下を向き、とりあえず大和が外へ行かないようにと、

扉の前に立ち、ドアノブを隠す。


「そんなに待てって言うのなら……、待たせるだけの覚悟があるのかよ」

「大和……」


大和は靖史に腕をつかまれ、少し前へ行きかけた体を元に戻された。

そして比菜に背を向けるように立ち、ファイルから1枚の請求書を取り出し、

机の上に置く。


「この30万、払ってくれるのか」

「大和……」

「あいつのしでかしたことを、自分がかぶれるのか……
待てって言うのなら、それくらいの覚悟があるんだろう」


比菜は玄関からゆっくりと中へ入っていき、その書類に目をやると、

会社で借りているレンタル機器のリース代金が請求書となってまとめられていた。

しばらくその書類を見ていた比菜だったが、自分が持ってきたバッグを開けると、

そこから通帳を取り出し書類の上に置く。


「わかりました。その30万私が払います。お金さえ戻れば文句はないでしょ。
私は康哉を信じているから、だから払います」


邦宏は比菜の表情を見た後、通帳を開き金額を確認すると、

そこにはが入出金した記録が残され、何年かかけて貯めてきた形跡が見られた。

通帳の金額は全てで40万足らずになっている。


「君、ここから30万払ってどうするの?」

「エ……」

「10万も残りがなくて、これからどうするんだって聞いてるんだ」


大和は元の椅子に戻り、比菜から視線を外したまま黙る。

靖史は邦宏が持っている通帳の中身をのぞき、顔をゆがめた。


「どうにか……します」


どうにかすると言ってしまったが、比菜には具体案はなく、声も自然に小さくなる。


「女はいいよなぁ。武器にするものがあるからうらやましいよ」

「大和!」


大和が比菜に言い放ったセリフに、靖史がまた止めに入り、

邦宏は立ち上がり、言い出してしまった比菜に通帳を戻す。


「君、家は? ここから近いの?」

「いえ……岡山です。康哉を頼って出てきたんですけど……」

「それじゃ住むところもないってこと? このまま岡山へ帰ったらどう? 
お金はいいからさ……」


邦宏はそう言うと、飲んでいたコーヒーカップを流しにさげた。

靖史は邦宏に声をかけ、自分が笹本さんちに行き、散歩をしてくるからと

時間が迫った仕事の交代を願い出る。


「邦宏、彼女の話をちゃんと聞いてやってよ。岡山から一人、康哉を信じて出てきたんだ。
帰れってただ追い返すのもかわいそうだ」


靖史の優しい言葉に、通帳を持ったままの比菜は軽く頭を下げた。

靖史もお返しのように頭を下げ、笹本さんの家へ向かうため、玄関へ向かう。

時計の針の音と、外を走る車の音と、近くの小学校の鐘が、それぞれの耳に届く。


「あの……お願いしたいことがあるんですけど、いいですか?」

「何?」


その言葉に大和の視線が戻り、比菜は思わず見てしまった大和への視線を邦宏に向ける。


「ここって、事務所だって言いましたよね。そういうことは夜、誰もいないって事でしょ。
その時間を私に貸してくれませんか?」


比菜の突然の提案に、怒りの表情を向ける大和と、玄関で動きを止めた靖史と、

その言葉にどれくらいの気持ちがこもっているのかを、探ろうとする邦宏がいた。





5 彼女と彼の決断


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コメント

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ただの勘違い女じゃない?

こんにちは!!e-441

ホゲッ!?な事に(どんなこと?)なってきました。

大和の言うことももっともだし(私も、いっしょにあつくなってたよ)
比菜の40万切るお金から30万円とるってのもねぇ、帰れも、そうだよと思った。
靖史の「話を聞いてあげれば」は、やさしのねって思ったし
そこから何かわかるかもしれないしさ。

突拍子もない事言いだした、比菜をどうするんだろう?

また大和は怒る?よね。

揉めるのは必須。呆れて言葉も出ないかな・・・。


     では、また・・・e-463

重いのは…?

こんにちは!

この展開は?

大和君はクールに見えて、意外と激情型ですね。
そして、それを落ち着かせようとしている邦宏君と靖史君。

大和君の言ってることは正論なんですが…
ここはもう少し落ち着いたほうがいいような…

でもでも、比菜さんの考えていることは?
思いつきでそんなこと言っても…だから、お話が続くんですね!

さぁ、ますます期待をv-290

大和???比菜??

大和の怒りや冷たい態度はわざと?
康哉のしでかしたことを分からせて、家に帰そうと・・

比菜ちゃんも何を考えて飛び出してきたのか
康哉の何を信じているのか。
そして又何を始めようとしているのか。


えーちなみに私の新作は、停滞中です(爆)

まだまだこれからなのです

mamanさん、こんばんは!

>ホゲッ!?な事に(どんなこと?)なってきました。

あはは……。この表現好きです。
そうそう、なんだろうこれは、になっているでしょ?
今はまだ、メンバー達の抱えていることが全く見えてないので、
読んでいる方からすると、理解しづらいのかもしれないですね。

さて、比菜ちゃんの提案を、邦宏と大和はどうするのか、
それは次回へ!

大和のこと

アルバトロスさん、こんばんは!

>大和君はクールに見えて、意外と激情型ですね。
 そして、それを落ち着かせようとしている邦宏君と靖史君。

比菜の携帯と康哉がつながっていることを、まともに見てますからね。
邦宏と靖史より、必死になるのかも(笑)

あとは、康哉を『信じている』比菜に、ちょっと感じることがあるんです。それはまた、後々……

大和の理由

yonyonさん、こんばんは!

>大和の怒りや冷たい態度はわざと?
 康哉のしでかしたことを分からせて、家に帰そうと・・

大和は、比菜と康哉の携帯がつながっていることを、
まともに見ているので、怒りも出てきてしまうのでしょう。
康哉を『信じている』というところも、カチンとくるのです。
それは後々……

>えーちなみに私の新作は、停滞中です(爆)

いつ、走りだす予定?

3人の違い

yokanさん、こんばんは!

>この比菜ちゃんの最後の言葉に対して、大和くん、靖史くん、邦弘くん、
 それぞれの反応が違うのがおもしろい

ありがとう!
そうなんですよ、それぞれの違いが、性格の違いだし、立場の違いも含んできます。

まだまだ始まったばかりなので、『?』でしょうけど、よろしくお願いします。



^^ゞ

大和君の正論をはくその勢いに
ドドドド・・と引いてしまたぁ(こわ!)

間違いじゃないのよね。間違いじゃ。
でも、女の子相手にもう少し言い方って物がぁ・・・(泣)

でも邦宏君は好き!!
優しいもん。
あれ???ここは私の好みを言う場所だっけ^^ゞ。

好み

tyatyaさん、こんばんは!

>大和君の正論をはくその勢いに
 ドドドド・・と引いてしまたぁ(こわ!)

あら……ひいちゃいました?(笑)
まぁね、靖史のお母さんも言っているように、大和は冷たいんですよ、一見
(ここがポイントなんだけど)。

>でも邦宏君は好き!!
 優しいもん。

あぁ、そうだよね。
私は、だいたい友達を作ると、そっちが茶目っ気のある男にしちゃう傾向があるようです。しかし、大和は真っ正直なタイプで、邦宏は意外に……なところもあるんですよ。


あれ? 靖史は?(笑)

重いぞ!

会社も家も新型インフルに振り回されて…ーー;
今日一気に読みましたぁ

重いのは私の体重…じゃ無くて^^;
お金を持ち逃げさいた康哉の罪
その康哉を想う比菜の想い
そして大切なお金を持ち逃げされ裏切られた
イケメン(と決めつける私)3人のやり場の無い怒り

康哉と大和たちとは“仲間”だったんだよね?
なのに連絡手段を切ってしまった
でも比菜とはそのままにしてる…
ん~、康哉に何があったのかしらぁ?
それはこれから解き明かされて行くんでしょうが
早く知りたいわぁ。。。

そしてそれぞれ個性が光るイケメン達
どれが私の好み~?!
イケメン4人と比菜と貴恵のこれからは?!
…なんて妄想中の熟女(自分で言うな!)です^^;

今回もここでおしまい?

金を持ち逃げ人を、犯罪者扱いするか、友人として見守るのか。
難しいところだよね。

比菜ちゃん、彼の良い部分をいっぱい知ってるんだろうね、なけなしの金を払おうって言うんだからさ。

夜の事務所を貸せ?
やっぱり、ここでお仕事をすることになる?^m^

無理しないでね

Arisa♪さん、こんばんは!

>会社も家も新型インフルに振り回されて…ーー;
 今日一気に読みましたぁ

あぁ……、それは大変だ。
我が家はまだ、インフル台風が来てないんですけど、いつ来るのかなんてわからないからな。

一気読みしてくれて、ありがとう。
適当に、お気楽につきあってね。

>重いのは私の体重…じゃ無くて^^;
 お金を持ち逃げさいた康哉の罪
 その康哉を想う比菜の想い

うーん……そうなんだよね。
康哉に振り回されている面々なんだけど、この出来事をどう捕らえるのかが、ポイントなわけで。

教えちゃいたいところだけど、それは後々。
登場人物が多くなるので、もう少ししたら相関図出すからね。
わからなくなりそうになったら、確認してください。

>そしてそれぞれ個性が光るイケメン達
 どれが私の好み~?!

さぁ、誰かなぁ……
これから色々なことが、わかってきますからね。

康哉の罪

なでしこちゃん、4話まで来ました。

>金を持ち逃げ人を、犯罪者扱いするか、友人として見守るのか。
 難しいところだよね。

邦宏と大和とでは、康哉との付き合いが違うんですよね。
その辺も微妙にズレが出るはず。

しかも、比菜が飛び込んで来ちゃったし……。

これからもこんな短さです(笑)