17 羨望 【17-5】


【17-5】


それから10分後、慶からの電話が再び鳴ったため、直輝はすぐに通話状態にした。

そこで慶が風に声をかけたこと、風が慶を覚えていたこと、

『直輝が待っているよ』と言うと、声をかけていた男達は、『待ち合わせ』かと思い、

その場を去って行ったことなど、順番に聞いていく。


「で、彼女は」

「今、俺の車の中……後部座席で寝てる」

「寝てる?」

「そう……しっかり横になって寝ているよ。いやぁ、信用されているのかな、俺」


慶は『これも危ないよね』と笑い出す。


「慶、俺、今、事務所にいるけど、これからマンションに戻るからさ。
悪いけどお前……」

「連れて行くよ、そっちに」

「あぁ……そうしてくれ」


直輝はそう答えると、慶に『頼むな』と話し、通話を終了する。

仕事を片付け、生島に挨拶をすると慶よりも先に着いていようと思い、

足早に車へ向かった。





車を駐車場に停めたまま、マンションの外に立っていると、

10分後くらいに慶の車が到着した。慶は道路の端に停車し運転席から出る。


「お届け物です」


慶はそういうと、後部座席を指さした。

直輝が見ると、風はまだ眠っている。


「本当に偶然だぞ。俺がひとときの出会いを求めて店に入って、
で、すぐに彼女を見つけたからさ。たまたま一緒にいたやつもいなかったし、
いや、入る時間が少しずれていたら、あいつらにお持ち帰りされていたって」

「うん……」


直輝は風を見ながら、慶の言葉に頷いていく。

この間の出会いといい、今回の状態といい、風は直輝が思っていた以上に、

『お嬢様』のイメージを覆してきた。


「あの店に、あんなふうにいつも出入りをしているのなら、
結構問題ありのお嬢さんだぞ、直輝」


慶は『お嫁さんには向かないかも……』と言い渋い顔をする。


「起こして、家に送るよ」

「お前が?」

「うん……」


直輝は風に声をかけるため、後部座席を開けようとする。


「あのさ……」

「何」

「少し難ありのお嬢さんでも、お前の未来の相手の可能性があるから、
言っていいのかわからないけれど……」

「なんだよ、そこまで言ったら聞けと言うことだろう」


直輝は慶を見る。


「風さん、『いぶき』って言っていた」


慶はさらに『いぶきが悪い』と、風の真似をしながら話す。


「『どうしてくるのよ』とか話していたし、
あれだけ何度も『いぶき』って言うのだから、この深酔いの原因なのかな」


慶の発言と視線に、直輝は『さぁ……』と軽く答える。


「男の名前か、女の名前か……それとも名字なのか……」

「風さん」


直輝は風の肩を叩き、声をかけた。

車の後部座席の扉が開いたことで、外の風が頬に当たり、

風は少しずつ目を開けて周りを見始める。


「あれ……」

「こんばんは」


慶が直輝の隣に立ち、声をかけると、

風は『ありがとうございます』と声を出し、体を起こし、車から降りようとする。


「うわ……」


しかし、風は立ち上がったものの、すぐにふらついてしまい、

直輝が支えるようになった。

風はその格好のまま、『家ですよね、送ってもらってすみません』と話す。


「この間の記憶が、戻ってるのか?」


慶は『ここは森嶋家ではないですよ』と風を見る。


「風さん、ずいぶん酔っているみたいですね。慶がお店で見かけて、
知らない男達に声をかけられていたので、心配して……」

「お店?」


風は、瞬間的に苦しそうな顔をする。

そして『気持ち悪い』と言いながら、その場にしゃがみ込んでしまった。

慶は『車に吐かれなくてよかった』と小さな声で言う。


「風さん……」

「いいです、すみません、下ろしてくれたら、階段を昇るだけなので帰れますから」


現実と空想がごちゃ混ぜになっていると思い、

直輝は『少し我慢して』と言うと、風をその場で背負う。


「直輝……吐かれちゃうぞ」

「慶、いいからお前も車を停めて、上に来い」

「エ……二人の方が……」


直輝の視線を感じ、『すぐに行きます』と慶は返事をする。

風を背負った直輝は、ポケットの鍵を取り出し、慶に『オートロック』を解除させる。

3人はそのままエレベーターに乗り、直輝の部屋に向かった。


【17-6】



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